6日月第40帖(213) ヒット156件目
ここに伊邪那美の命語らひ
つらく、あれみましと
つくれる国、末だ
つくりおへねど、時まちて
つくるへに、よいよ待ちてよと宣り給ひき。ここに伊邪那岐命、みまし
つくらはねば吾と
つくらめ、と宣り給ひて、帰らむと申しき。ここに伊邪那美命九(こ)聞き給ひて、
御頭(みかしら)に
大雷(おおいか
つち)、
オホイカツチ、
胸に
火の雷(ホのいか
つち)、
ホノイカツチ、
御腹には
黒雷(くろいか
つち)、
黒雷(クロイカツチ)、
かくれに
折雷(さくいか
つち)、
サクイカツチ、
左の御手に
若雷(わきいか
つち)、
ワキ井カツチ、
右の御手に
土雷(
つちいか
つち)、
ツチイカツチ、
左の御足に
鳴雷(なるゐか
つち)、
ナルイカツチ。
右の御足に
伏雷(ふしいか
つち)、
フシ井カツチ、
なり給ひき。伊邪那岐の命、是見(こみ)、畏みてとく帰り給へば、妹伊邪那美命は、よも
つしこめを追はしめき、ここに伊邪那岐命黒髪か
つら取り、また湯津々間櫛(ゆ
つつまぐし)引きかきて、なげ棄(う)て給ひき。伊邪那美命二(
つき)の八くさの雷神(いか
つちかみ)に黄泉軍(よも
ついくさ)副(そ)へて追ひ給ひき。ここに伊邪那岐命十挙剣(とづかの
つるぎ)抜きて後手(しりへて)にふき
つつさり、三度黄泉比良坂(よも
つひらさか)の坂本に到り給ひき。坂本なる桃の実一二三(ひふみ)取りて待ち受け給ひしかば、ことごとに逃げ給ひき。ここに伊邪那岐命桃の実に宣り給はく、汝(みまし)吾助けし如、あらゆる青人草の苦瀬(うきせ)になやむことあらば、助けてよと宣り給ひて、また葦原の中津国にあらゆる、う
つしき青人草の苦瀬に落ちて苦しまん時に助けてよとのり給ひて、
おほかむ
つみの命、
オオカムツミノ命
と名付け給ひき。ここに伊邪那美命息吹き給ひて千引岩(ちびきいわ)を黄泉比良坂に引き塞(そ)へて、その石なかにして合ひ向ひ立たして
つつしみ申し給ひ
つらく、う
つくしき吾が那勢命(なせのみこと)、時廻り来る時あれば、この千引の磐戸、共にあけなんと宣り給へり、ここに伊邪那岐命しかよけむと宣り給ひき。ここに妹(いも)伊邪那美の命、汝(みまし)の国の人草、日にちひと死(まけ)と申し給ひき。伊邪那岐命宣り給はく、吾は一日(ひとひ)に千五百(ちいほ)生まなむと申し給ひき。この巻二
つ合して日月の巻とせよ。